■2012-07-29
* [Perl] 間違ったPerlコミュニティの女性の目立たせかた
今月初め、CPANからあるAcmeモジュールが削除されました。そしてExtUtils::MakeMakerなどで有名なSchwern氏がそのことについてHow Not To Highlight Women In Perlという記事を書いていました。私は『Acme大全2012』をつくる準備の過程でこの一連のやりとりをみて、考えさせられ、紹介したいなと思いました。そこで本人の了解を得てここに翻訳したものを掲載します(『Acme大全2012』の付録にも掲載しています)。モジュール名がAcmeまで出てしまって本来の記事の趣旨に厳密には反しているのですが、ご寛恕ください(本人にはどちらにも掲載することの了解を受けてます)。
間違ったPerlコミュニティの女性の目立たせかた
要約:ジェンダーの匿名性は防御である。男性が優位なコミュニティにおいては、多くの女性は安全性を優先させる。機械的に解析可能な女性CPANモジュール作者のリストは、たとえそのリストに載っていなくとも、匿名性に対する脅威となる。
さらに短く:ジェンダーを強調することは先進的であり、軽々しく行うべきではない。
あるモジュールが最近CPANにアップロードされた。そのモジュールの目的は女性のCPANモジュール作者の長大なリストを提供することであった。そのモジュールの作者は良かれと思い、少なくとも「好奇心から」という以上の意図は無かったのだと私は思っている。また、そのモジュールに対し気持ち悪いという反応があったこと、モジュールに対する削除要請がなされたことに対して、作者は大変困惑していると思う。幸いなことに、要請されて彼は自発的にそのモジュールを削除した。だが不幸なことに、このコミュニティはジェンダーポリティックスに関して充分には精通していないため、この種のことは再び起こりうるであろう。そうならないためにも、ジェンダーポリティクスについて語る良い機会である。
そう、私はそのモジュールについて慎重に言及しないようにしてきた。そのデータに注目を浴びさせないために、またモジュールの作者を一層悩ませないために。うん、コメント欄にそのモジュールへのリンクを張らないで頂きたい。そのモジュール自体が論点ではないのだし、静かに消えていくのがベストであろうから。そしてどうかコメントをつける皆さん、もしもあなたのコメントが「検閲」や「表現の自由」についての話になるなら、他所でやってほしい。Perlの別のモットー(「試してみよう」)を讃えよう。そうして他の人がこの種の記事が呼び寄せるいつもの騒音でかき消されることなく何かに取り組めるようにしよう。もしあなたがどうしても語らなければならないなら、自分のブログに書いた上でコメント欄にリンクをはってもらいたい。あなたの自重に感謝。
CPANのジェンダー情報は公に入手可能かもしれないが、一方、それはそのデータを欲する個々の人間が苦労して作者の名前を一つひとつ目で追い、その人らのジェンダーを推測することを要求する。このことがそのデータで何かしようとする際の障壁をもたらす。この障壁は次に上げる両方の道を断ち切る。それは人々が気まぐれで良いことをするのを妨げる。それはまた気まぐれでひどいことをするのを妨げる。
ジェンダー情報を容易に扱える形式にまとめることはこの障壁を取り除いてしまう。残念ながら極端に男性優位なコミュニティにおいて人々は、データの主要な利用方法は女性のCPANモジュール作者を追跡することだと考えるだろう。特にFacebookやFoursquareのストーカーアプリの例に続くものとして。これが実際に起きようが起きまいが、それは知覚と感情であり、女性とって真に危険である。どれほど善意があろうともこれは変わらない。わずかな人口統計データはその代価に見合わないのだ。
もしその意図が女性のCPANモジュール作者の意識を高め、女性の参加をいっそう促すことにあったのなら、正反対の効果を持つだろう。ある者はそれを見て肩をすくめるだろう。しかしそれ以上に「ストーカーアプリ」とみなすだろう。実際のプロセスが自発的であるかどうかに関わらず、多くの者がジェンダーを無意識のうちに際立たせるものとみなすだろう。誤ってなされたことで、いっそうコミュニティ内部の問題が女性たちにもたらされる。つまり、彼女らをPerl使いとしてみなくなり、「オープンソースの女性」問題に晒されるか、あるいは付け込まれるかする女性とみるようになることで。オープンソースコミュニティ内の女性は皆、女性を代表することを期待され、コーディングするだけではいられない、という「ユニコーンの法則」 も参照されたし。
ジェンダーバランスが崩れていればいるほど、我々はジェンダーについて敏感でなければならない。これはそういうシチュエーションの一つなのである。女性の側に力や意思表示の権利が少なければ少ないほど、彼女らは付け込まれることに用心深くならざるをえない。最初に考えることは防御であり、そして匿名性は防御なのである。逆に言えば、バランスがとれている状況であったなら、受け入れ可能であっただろう。少なくともいきなり削除要請が出たり、一笑に付されたりはしないだろう。ジェンダーパワーの偏ったバランスを正すこと、そうすれば我々はみな緊張を解くことができる。
正しく女性を目立たせる方法がある。This Is What A Computer Scientist Looks Likeが一つの例だ。自発的であり、権限は委ねられており、そしてストーカー連中にとって使い勝手の悪いものだ(これを挑戦と受け取らないでくれ) 。これは友好的で、本人に権利が与えられており、そして安全であるというメッセージを作りあげている。この作業は、我々のほとんどが持っておらず、また想像できない視点を必要としている。しかし我々はジェンダーに対していかにして敏感になるかを学ぶことはできる。それは先進的なことであり、軽々しく取り組めることではない。しかし取り組むべきことである……ただし、それはCPANにモジュールをアップすることによってではない。
もしあなたが男であるなら、そして上記のように考えているのならば、週末に独りでいつもやってることをやるのではなく、何人かを集めて、事前にそれについて語って欲しい。意見表明してみて、何人かの女性に見てもらって欲しい。一人の女性ではなく(「僕の彼女はこれでokといったよ」では意味が無い)、特に主流コミュニティ外の女性に。もっとも重要なことはプロジェクトに女性を巻き込み、力を発揮してもらうことだ。彼女らに大きな決定権を与えることになり、あなたはぶつぶつ不満を言いながら作業をすることになるかもしれないが。女性に力を発揮してもらうプロジェクトをなしたいなら、そのプロジェクト内で女性に権限を与えることでその助けとなろう。
(How Not To Highlight Women In Perl)
誤訳・誤字の責は訳者に帰します。ご指摘いただけたら幸いです。
@miyagawaさんからの指摘を受けてタイトルを直しました
■2012-07-30
* [近況] Takao.mt 2012 (hachioji.pm #19)参加と夏コミお知らせ
高尾山のビアマウントでビールを飲んで山に登るイベントTakao.mt行ってきました。今回は山頂まで行かずにビール飲んでましたが。詳細は公式サイトからどうぞー。次回は8/6三鷹近辺でやるのですが、これはちょっと打ち合わせてきなものでして、いつものhachipji.pmはたぶん9月1日になると思います。
さて、LTでもちょっと話しましたが、今年も夏コミ参加です。3日目 U-10a:「どんぞこ楽屋」:例年通り『Acme大全2012』を出します。総ページ数328頁のPerlの薄い本です。
Perl用語集部分に50pほど割いています。波括弧の前のプラス(+{}
)などのググりにくい項目なんかも説明しています。それから表紙がちょっと変化しました。これは表紙に変化がなく新刊だと思わなかったということを去年言われたため。あとParumonも残りわずかですが持って行きます。
今年のYAPC::Asia 2012ではどんぞこ楽屋のブースは出ませんので、もしもお近くにお寄りの際は遊びに来てくださいませ!
あと、今月初めあるAcmeモジュールがCPANから削除されました。なぜ削除されたのか、どういう問題があったのかということについて、ExtUtils::MakeMakerなどで有名なSchwern氏が記事を書いています。彼の了解を得て日本語に翻訳しましたので、紹介します。これは『Acme大全2012』にも付録で載せました。 →いかにしてPerlコミュニティの女性を目立たせないようにするか("How Not To Highlight Women In Perl"の日本語訳)
_ ktat [perldoc.jp の /etc/articles/ に突っ込んで欲しいなーとか。賑やかしのために(ぉ]
_ makamaka [あー、了解です。 とはいえ、いまのperldoc.jpの状態についていけてないので 何かリファレンス的なページありま..]
_ ktat [すみません。コメント見逃してました。perldoc.jp の、「翻訳の作法」を参照頂ければ、大体わかるかとー。]